ICC イスラエル首相やハマス指導者ら双方計5人の逮捕状請求

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐって、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官は、イスラエルのネタニヤフ首相やハマスのガザ地区トップのシンワル指導者など、双方の合わせて5人に対して逮捕状を請求すると明らかにしました。これについて、双方が相次いで声明を出して反発しています。

ICCのカーン主任検察官は20日に声明を発表し、戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで、イスラエルとハマスの双方の合わせて5人に逮捕状を請求すると明らかにしました。

このうちイスラエル側は、ネタニヤフ首相とガラント国防相の2人に対してで、去年10月8日以降、戦争の手段として民間人を飢餓に陥らせたり、意図的に民間人に対して攻撃を行ったりした戦争犯罪などに責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

一方、ハマス側は、ガザ地区トップのシンワル指導者や、ハニーヤ最高幹部ら3人に対してで、去年10月7日のイスラエルに対する襲撃で民間人を殺害したり、少なくとも245人を人質にとったりした戦争犯罪などの責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

カーン主任検察官は、声明で「国際法はすべての人に適用される。歩兵も司令官も政治家も罰を免れることはできない」と強調したうえで、今後さらなる逮捕状を請求する可能性もあるとして、改めて国際法の順守を求めています。

裁判所では今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで、逮捕状を出すか判断することになります。

双方 ICCに対し反発

これに対してネタニヤフ首相は20日の声明で「ICCの検察官が大量殺人者であるハマスと民主的なイスラエルを対比したことを嫌悪感をもって拒否する。われわれの手を縛ろうとする試みは失敗する」と非難しました。

またハマスも20日の声明で「被害者と死刑執行人を同等に扱おうとすることを強く非難する」と反発しました。ICCは今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで逮捕状を出すか判断することになります。

米 バイデン大統領「イスラエルとハマス 同等ではない」

ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相や、ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者などに対し逮捕状を請求すると明らかにしたことについて、アメリカのバイデン大統領は20日、声明を発表し「イスラエルの指導者たちに対する逮捕状の請求は言語道断だ」と非難しました。

また、バイデン大統領は、ユダヤ系アメリカ人を招いた、ホワイトハウスでのイベントであいさつし「イスラエルとハマスは同等ではない。民間人を守るためにできることはすべてするが、はっきりさせておきたいのは、ICCの主張と違って、いまガザ地区で起きていることはジェノサイドではない。われわれはそうした主張を拒絶する」と述べました。その上で「われわれは常にイスラエルと共にあり、イスラエルの安全保障への脅威に立ち向かう」と述べ、イスラエルの防衛を支援していく姿勢を強調しました。

ICC逮捕状の意義と影響

ガザ地区で続く衝突の双方の当事者に対する逮捕状を請求することについて、カーン主任検察官は声明で「法を公平に適用する姿勢を示さず、選択的に適用していると受け止められれば、法が崩壊する条件をつくってしまう」と説明し、捜査の公正さと中立性を強調しています。

ICCが逮捕状を出すかどうかはこのあと予審裁判部の判断に委ねられますが、実際に逮捕状が出されれば、ICCに加盟する日本を含む124の国や地域は、域内に対象の人物がいれば身柄を拘束し裁判所に引き渡す義務を負うことになります。

このためネタニヤフ首相らはこれらの国や地域への渡航が難しくなり、外交活動などが制限される事態も想定されます。

ICCがウクライナでの戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したロシアのプーチン大統領は去年、ICCに加盟する南アフリカで開かれた国際会議への対面での出席を見送りました。

イスラエルはICCに加盟しておらず、首相や国防相に対する逮捕状が請求されたことに激しく反発していて、今後の捜査などにも一切協力しないものと見られます。